不織布とは?素材の特徴や原料、用途、お手入れ方法まで詳しく解説
2020年からの新型コロナウイルス流行以降、
不織布というワードをよく耳にするようになりました。
不織布製のマスクが品薄になり、
連日ニュースで取り上げられていたのは記憶に新しいと思います。
トートバッグ工房では、不織布製のバッグや巾着などを取り扱っていますが、
ここでは不織布という素材が一体どのようなものなのか解説していきます!
1.不織布とは?
不織布は、「ふしょくふ」と読みます。
名前のとおり織っていない布のことを言います。
英語では「non-woven fabric」といい、
直訳すると織られていない布となります。
通常の布は、繊維を撚(よ)って糸にしたものを織っていますが、
不織布は繊維を一定方向またはランダムに重ねて絡み合わせて、
接着剤や熱で結合させてシート状にしたものです。
このあとで説明していきますが、
不織布は使用する原材料や製造方法などを変えることで、
風合いや強度を調整できるため、さまざまな分野で利用されています。
2.不織布の歴史
不織布の歴史は、1920年代にドイツのフェルト業者が
毛屑や紡毛を接着剤で固めたのが始まりと言われています。
当時はフェルトの代用品として使われていました。
日本で不織布の製造が本格化したのは1950年代半ばと言われています。
乾式不織布を製造する装置がアメリカから持ち込まれたことで普及しました。
乾式不織布とは空気中に分散させた繊維を積層する方式で製造する不織布のことです。
3.不織布の特徴
不織布はポーラス構造(小さい穴が多数空いている)のため、
通気性、 吸水性が良く、 保湿性も高いという特徴があります。
また、目的や用途に応じて原料や製法を組み合わせることにより、
機能を付加することも出来ます。
<メリット>
- 通気性、吸水性、保湿性に優れている
- 縦横の方向を持たず寸法安定性に優れている
- 複数の素材を組み合わせることが可能
- 原料や製法の組み合わせにより機能を付加できる
- 厚みや密度を自由に変更できる
- 大量生産ができて安価
- 裁断部分からほつれることがない
<デメリット>
- 織られた布と比較すると耐久性が低い
- 何度も繰り返して使用するものには向いていない
4.いま不織布が注目される理由
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、
ウイルス拡散防止に効果がある、
マスクの着用が求められるようになりました。
マスクには不織布製のほかにウレタン製や布製もありますが、
厚生労働省の調査によると、一般的なマスクの中では
不織布マスクが高い効果を発揮すると言われています。
最近では、不織布を着色したおしゃれなカラーマスクも販売され、
ファッションアイテムの1つとして注目されていますね。
5.不織布の原料
不織布は、さまざまな原料を使用することができますが
大きく分けて天然繊維と化学繊維に分けられます。
天然繊維
綿
肌触りの良い仕上がりになりやすいのが特徴です。
ガーゼをはじめとする医療用品で使われています。
パルプ
パルプとは木材や草などから取り出した繊維のことです。
紙の原料として知られていますが不織布の原料としても使われています。
医療用品や化粧品、食品関連などさまざまな用途で使用されています。
羊毛
肌触りの良いフェルトも不織布の1種です。
フェルトは毛の繊維などを石鹸液などで湿らせ、圧力を加えることで作ります。
竹
竹から繊維を作り出す技術を用いて竹素材の不織布が製造されています。
使い捨てのペーパータオルやマスクにも使用されています。
化学繊維
ポリエステル(PET)
不織布として使用される割合が非常に高い繊維です。
特に衣料用として多く使われています。
ポリエチレン(PE)
工業資材など耐久性を要求される用途で使用されています。
代表的な素材としては、タイベックです。
ポリプロピレン(PP)
衣料用や工業資材などで特に耐久性を要求される用途で使用されています。
トートバッグ工房で扱っている不織布バッグも、この素材です。
レーヨン(再生繊維)
吸水性が要求される用途で使用されています。
ナイロン
強度と耐久性を要求される用途で使用されています。
しかし、原料が割高なため使用は限られています。
ビニロン
耐水性、対候性を要求される用途で使用されています。
6.不織布の用途
不織布はコストが安いため、使い捨て用途で広く使用されています。
医療用品
- 手術着
- ガーゼ
- マスク
衛生用品
- 紙おむつ
- 生理用品
- ウェットティッシュ
衣料用品
- 衣料用芯地
- ブラジャーカップ
- 肩パッド
生活用品
- スーツカバー
- ティーバッグ
- コーヒーフィルター
- キッチンペーパー
- CD、DVD等の簡易ケース
- トートバッグや巾着
建築・土木用品
- ルーフィング材
- 結露吸収シート
- 防音材
- ろ過材
- 遮水シート
身近な商品を例として挙げましたが、
みなさんが普段、使っている物もあったのではないでしょうか?
これら以外にも、まだまだ紹介しきれないほど不織布を使用した商品はたくさんありますよ。
7.不織布製品のお手入れ方法
用途の部分でも触れましたが、不織布は使い捨て製品が多いため、
お手入れが必要な場面は少ないかと思います。
結論からいうと、一般的な不織布はどのメーカーも洗濯の保証はしていません。
トートバッグ工房で扱っている不織布バッグも洗濯不可とさせていただいています…。
しかし、お気に入りの不織布製品が汚れてしまったから、
どうしてもキレイにしたい!という場合もあるかもしれません。
どうしても洗濯をご希望の場合は、絶対に成功する保証はできかねますが、
下記に手順と注意点を記載しますので、チャレンジしてみてくださいね。
- 不織布は毛羽立ちやすく、シワになりやすいので優しく手で押し洗い。
- 揉み洗いはNG
- 洗剤を使用する場合は、食器用洗剤または洗濯用中性洗剤
- タオルやキッチンペーパーなどで挟んで、余分な水分を取る。
- シワにならないよう、真っすぐ伸ばして干す。
- アイロンはNG(繊維を結合している接着剤が溶けてしまうため)
どうしてもアイロンをかけたい場合は、あて布をして様子を見ながら低い温度で。
強いシワが出来てしまったら二度と取れない恐れがありますので、
実際にお手入れされる方は、シワにならないよう注意して行ってくださいね。
8.不織布についてまとめ
不織布は目的や用途に応じて原料や製法を組み合わせることにより、
いろいろな機能を付加できる優れた素材だったんですね。
マスクをきっかけに有名になった不織布という素材ですが、
マスク以外にも身近なさまざまな製品が、
実は不織布だったと気付いた方も多いのではないでしょうか。
トートバッグ工房では不織布製のトートバッグや巾着を取り扱っています。
オリジナルデザインをプリントすることもできます。
気になった方は、ぜひ下記ページもチェックしてみてください。
この記事を監修してくれた「トートバッグ博士」
山本 禎久(やまもと よしひさ)
株式会社エーリンクサービス 代表取締役
昭和48年生まれ 福井県越前市出身
趣味は山登りとゴルフ、好きなトートバッグのカタチは「船底クラシックトートバッグ」。
スピードと挑戦を求め続け、社内で誰よりもトートバッグに見識がある。
大阪学院大学を卒業後、営業、物流、製造業務など多くの職種に従事。退職後、2009年に販促バッグ等の製造、輸入、販売を手掛ける株式会社エーリンクサービスを設立。『考える価値創造集団』を経営理念に掲げ、従業員一人ひとりが積極的に考え、行動することでトートバッグ専門店としての新サービスを企画・発信し続けている。
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